お薬についての豆知識
お薬というものは、もともと私たちの体にとっては異物です。そのため、お薬の用法・用量をきちんと守らなければ十分な効果が得られないどころか、副作用として有害な症状が現れてしまいます。お薬を正しく使用することで、副作用を少なくし、大きな効果が得られるようにしましょう。
- お薬はどのようにして飲めば良いですか?
- お薬を水またはぬるま湯以外の飲み物で飲んでも良いですか?
- お薬を飲む時間はいつですか?
- お薬を飲み忘れた場合、どうすれば良いですか?
- 症状が軽くなったので、お薬を飲まなくて良いですか?
- お薬を飲むときの水の量はどれくらいですか?
- お薬を飲み過ぎてはいけないのですか?
- 1つの病気に対して2種類以上のお薬を同時に使用することがありますか?
- 副作用はどうして起きるのですか?
- 副作用と思われる症状にはどのようなものがありますか?
- 副作用を少なくするためにはどうすれば良いですか?
- お薬と食事の関係について
- 小児にお薬を飲ませる時にはどのようなことに気をつけたら良いのでしょうか?
- 小児にはどのようにお薬を飲ませると良いのでしょうか?
- 若い人に比べて高齢者でお薬の副作用の発生が多いのはなぜですか?
- 高齢者がお薬を服薬する時にはどんなことに気をつけたら良いですか?
- お薬が飲みにくい場合はどうしたら良いですか?
- 妊婦がお薬を飲んでも良いですか?
- 妊婦がお薬を服薬する時にはどんなことに気をつけたら良いですか?
- 授乳中にお薬を飲んでも良いですか?
- お薬はどこに保管すれば良いですか?
- お薬を保存する時に気をつける事はなんですか?
- お薬はどれくらい長持ちするのですか?
お薬は、コップ一杯の水またはぬるま湯(37度くらい)で飲みましょう。お薬を水なしで飲みますと、お薬が食道にくっついて潰瘍ができたり、胃や腸でお薬がよく溶けないため、吸収が悪くなることがあります。必ず水またはぬるま湯で服用してください。
飲みにくいと言ってお茶やジュース、牛乳でお薬を飲まないでください。お薬によって、ジュースやコーラに入っている炭酸、牛乳のたんぱく質や脂肪などがお薬の成分と結びついてお薬を変化させることがあります。お酒やビールで飲むことも薬の作用に影響を与えたり、副作用を高めるので危険です。
病院で処方されるお薬には用法が指示されています。きちんと守りましょう。
- 食直前 :食事の5〜10分前
- 食前 :食事の30分〜1時間前の空腹時
- 食直後 :食事が済んだらすぐ、15分以内(胃腸障害を起こしやすい薬のことが多い)
- 食後 :食事のあと30分くらい(胃腸障害の予防、飲み忘れの予防)
- 食間 :食後2〜3時間後の空腹時(食事をしながらではない)
- 就寝前 :寝る直前、または寝る30分〜1時間前
- 頓服 :定期的に服用するのではなく、症状(痛みが激しいなど)に応じて服用すること
お薬を飲み忘れたからといって、次に2回分をまとめて飲むのは危険です。ご自分で判断せず、必ず医師または薬剤師にご相談ください。医師は患者さんの病態や症状に応じてお薬を処方しますので服用回数や日数は確実に守ってください。
病院で処方されたお薬は、症状が軽くなったからといってご自分の判断で勝手に中止しないで下さい。お薬の中には長く飲み続けていたことで体がそのお薬がある状態に慣れてしまい、急にお薬を中止すると、かえって症状が悪くなる場合があります。特に、睡眠薬、抗不安薬、血圧降下薬、消化性潰瘍治療薬、副腎皮質ホルモン剤、抗菌薬(抗生物質)などでは注意が必要です。
一般に「コップー杯の水とお薬を一緒に飲むのが良い」と言われていますが、早くお薬を効かせたいときには、さらにもう一杯の水を飲むように勧めることもあります。ただし、コップー杯の水がお薬の効き目を高めるといっても、小さな子供やお年寄り、それに胃腸の悪い人は、冷たい水よりはぬるま湯にしたほうが良いでしょう。そのほうがお薬が溶けやすく、胃によけいな刺激を与えずにすみます。しかしながら、心臓病や腎臓病の人は水分をとりすぎると病状を悪化させてしまうことがありますから、水も少なめにするなどの注意が必要になります。
お薬はたくさん飲めば飲むほど効き目があるというものではありません。むしろ、たくさん飲んだ為に、場合によっては危険な状態になってしまうことさえあります。たとえ効かないと思っても、ご自分の考えで量を増やしてはいけません。中でも、睡眠薬や糖尿病のお薬などを飲み過ぎたりすることは大変危険です。子供のシロップ剤なども目盛り通りに正確にはかって飲ませるようにしましょう。お薬には「これだけの分量を飲めば効く」という目安があり、効くか効かないかは、その時の病気の程度や体調にも左右されます。したがって、お薬が効かないからといって、指示された量以上に飲むことは大変危険なことです。お薬が効かないと思ったら、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
一つの症状に対して、2種類以上のお薬を一緒に飲むことがあります。1つのお薬(1種類の成分)の効果よりも、お互いのお薬(2種類以上の成分)の良い効果をさらに高めたり、副作用が現れにくくするなどの効果をねらったものです。しかし、もしお薬の飲み合わせが悪ければ、思い通りの効果が出てこなかったり、思わぬ副作用が出てきたり、時には大変な危険を生じたりします。そのためにも、他の病院や診療科を受診されて既にお薬を服用しているときには、その事をあらかじめ医師や薬剤師などに伝えることはとても大切です。
お薬は本来、私たちの体にとっては「異物」です。したがって、副作用のないお薬はありませんが、これを有効に、しかも安全面に十分注意して上手に利用しているのです。お薬ができるまでには長い年月と費用をかけて有効性と安全性がチェックされます。いくら有効な物質であっても、安全性が保証されない場合は医薬品とはなりません。さらに有効かつ安全に用いるための使用量、使用方法の検討が行われます。そして正しく使用すれば有効であり、安全であると判断されたもののみが医薬品となります。したがって使用方法を間違えるとか、使用量が適正でない場合などには副作用が現れることがあります。またわずかではありますが、安全性に十分注意しながら使用しているにもかかわらず、副作用が現れる場合もあります。
副作用の現れかたには個人差があります。これは年齢、体質、性別、人種差、病気の種類などが関係しているためです。したがって、副作用の症状は人それぞれです。副作用の代表的な例としてアレルギー反応による発疹や発熱などがあります。その他、副作用と思われる症状:吐き気、下痢、めまい、けいれんなどが現れた場合には、その症状の程度と、使用されているお薬によって対処の仕方が異なりますが、まず担当医師、薬剤師に連絡し指示を受けてください。
お薬の副作用をより少なくするためには、まず、お薬を正しく使用することです。一般薬であれば、添付されている使用上の注意をよく読んで、理解したうえで用いることが大切です。また病院から処方されたお薬は、薬の袋に書かれている指示どおりに使用してください。少しでも疑問な点があるときは遠慮なく薬剤師にお尋ねください。また過去に何らかの副作用の現れたことのあるお薬がありましたら、受診されたときに医師に伝えるようにしましょう。他の病院や診療科に受診して別のお薬を使用している場合や、一般薬を使用している場合なども必ず医師に伝えてください。
食事とお薬の効果については、次の三つの場合が知られています。
①食事によってお薬の吸収が妨げられる場合
お薬は食事と一緒になると吸収が遅くなるため、血中の濃度をいそいで高めなければならないお薬の場合には不利になります。一部の抗生物質などではお薬が食物に包まれて吸収されにくくなることもあります。食事をして消化液がたくさん出ると胃酸に不安定なお薬は分解されます。一部の抗生物質はカルシウム(特に乳製品)と結合し吸収されなくなります。また、蛋白質の高い食事をとるとその中のアミノ酸がお薬の吸収を妨げることもあります。
②食事によってお薬の吸収が高められる場合
食事による消化液の分泌の高まりがお薬の吸収を良くします。胃酸や胆汁の分泌により溶解が早まるお薬もあります。特に、脂肪の多い食べ物(ベーコン、卵、バターなど)では胆汁の分泌が多くなります。食べ物の存在によって胃腸の運動が高まり、固形の薬剤は崩れやすく溶け出しやすくなります。蛋白質の多い食事をとると胃腸の血流が増し、特に肝臓への血液の流れがとても速くなり、血圧を下げるお薬の吸収が増大することが知られています。
③お薬と食品の相互作用が生じる場合
・キャベツ、ブロッコリー、レタス、納豆、クロレラなどには多くのビタミンKが含まれています。ビタミンKには血液を固める作用があります。そのため、血液が固まるのを抑えるお薬を飲んでいる人の場合、これらの野菜をとり過ぎるとお薬の効果が弱くなることがあります。納豆菌は腸内ではビタミンKをつくるので、特にこの作用が強いとされています。
・グレープフルーツジュースには、体内でお薬を分解する酵素を邪魔する物質が含まれており、カルシウム拮抗剤という血圧を下げるお薬を服用している期間に飲むとお薬の作用が強く現れることがあります。
・酒類に含まれるアルコールは、中枢神経(脳や脊髄)の働きを抑えます。中枢神経に作用する鎮痛剤・安定剤・催眠剤・抗ヒスタミン剤などのお薬は、酒類で服用すると作用が強く現れることがあります。
・塩分の少ない食事で利尿降圧剤の作用が高まり、高血圧の治療効果が一層良くなります。
・カフェインを含む緑茶、紅茶、コーラなどをあまり大量に飲むと気管支を広げるお薬の副作用を強め、よく眠れなかったり、症状が不安定となることがあります。
このように、お薬と食べ物の相性の悪い組み合わせというのは確かにありますが、特に医師または薬剤師の指示でもない限り、お薬と食べ物の組み合わせについて神経を使うことはありません。それより規則正しい食事を心がけてバランスよく栄養をとる事の方が大切です。健康の基本はあくまでも食事であり、それを無視して薬を飲んでもあまり意味がないということを忘れないで下さい。
細菌やウイルスに対しての抵抗力が弱いため病気になりやすい小児へのお薬の服用には、成人と大きく違う点があり注意が必要です。小児は一定の年齢まで肝臓や腎臓の機能が未発達であったり、血液と脳のルートが未完成であるため、お薬の効果や副作用が強く現れることがあります。また、お薬の効果には個人差がありますが、特に小児ではその差が大きく、お薬の吸収の速い子と遅い子がいます。ご両親はお子さんのお薬についての正しい知識を持ち、常にお子さんの状態に気をつけることが必要です。
赤ちゃんにお薬を与えるときは、すぐに吐くため空腹時が良いと言われています。粉薬は、1回分をシロップに練りあわせ、頬の奥の方に塗り付けるか、お猪口に少量の白湯でといてスポイトで与えたりします。1回分をミルクの中に溶かしこんで与えると、飲み残したり、ミルクの味が悪くなってミルク嫌いの原因にも成りかねません。お薬の時間だからといって、寝ているのを無理に起こしたりせずに、お子さんの様子を見て、時間や食事にとらわれないで与えた方が良いでしょう。病気の治療のために、睡眠は最も大切な要素の一つです。しかし、慢性疾患などで体の中のお薬の濃度を一定に保たなければならない場合は、起きている時間の中で無理なく服用できるようにあらかじめ計画を立てておきましょう。
また、最近では子供向けのゼリー状のオブラートが複数販売されています。これらをお薬の種類やお子さんの好みに合わせて、上手に使い分けてみるのも良いでしょう。ジュースやアイスクリームに混ぜる方法は、薬剤によっては苦味が出たりすることがありますので、相性の良い組み合わせを薬剤師にご相談下さい。
<参考>
小児
新生児:出生28日間
乳児期:1歳
幼児期:7歳未満(就学まで)
学童期:12歳(小学校時代)
高齢者では、加齢に伴って体のいろいろな機能が変化し、一般に肝臓や腎臓などの機能が低下している場合があります。そのため、お薬の分解や排泄などが悪くなってお薬の作用が強く現れたり、お薬が体内に長く残ったりして時として思わぬ副作用が現れる場合があります。必要以上に副作用について心配する必要はありませんが、高齢者では特に、指示通りの用法・用量を守り、適正にお薬を使用することが大切です。また、高齢の患者さんでは、様々な疾患を併発することが多く、服薬するお薬の種類も多くなり、思わぬお薬の相互作用を引き起こす可能性も高くなります。そのため、高齢者は副作用の発生が若い人に比べて多いのです。
高齢者では複数の病気にかかられ、その病状により複数の医療機関(診療科)を受診される場合があるのではないでしょうか。その際、既に服用しているお薬がある場合には、その事を担当の医師、薬剤師に伝えて頂くことが薬の重複や相互作用(飲み合わせによる健康被害)を避けるためにも重要です。そのためには、ご自身の”お薬手帳”に市販薬を含めて服用している全てのお薬を記載し活用されることをお勧めします。また、病気をしたり、お酒の飲みすぎや煙草の吸いすぎなど、若いときの不摂生で一人一人の生理機能の低下の度合が違います。お薬の効き方も一人一人違いますので、おかしいと感じても自分勝手に飲むのをやめたり増量したりしないで医師や薬剤師に相談して下さい。特に慢性の病気を持っている場合は、たとえ長期間、お薬が変わらなくても一定間隔で医師の指示どおり診断や検査を受けて体とお薬のチェックを行いましょう。
最近、お薬の剤形(形態)についての研究が進み、様々な剤形のお薬があります。お薬が服用しづらい場合にはお気軽に薬剤師にご相談ください。
妊娠中のお薬の使用については、誰もが神経質になるのは当然のことだと思います。しかし、胎児への影響をあまりにも心配し過ぎて、必要なお薬を服用せずに母体の健康を損ねたのでは何にもなりません。お薬を使用することによる利益と胎児への影響(不利益)を適正に判断することが重要です。この判断はとても難しいので、妊娠中あるいは妊娠の可能性のある方は、自己判断でお薬を使用(あるいは中止)することなく、医帥あるいは薬剤師に相談することが大切です。
妊婦の飲んだお薬が胎児に及ぼす影響は、母体の体質、投与時の胎齢、薬剤の胎盤通過性などにより異なり、一定ではありません。妊娠時、体内では複雑な変化が起っているので、お薬の副作用もより強く発現することがあります。特に妊娠初期03・4ヵ月の間は、お薬の服用・使用に気を付けなければなりません。この時期は赤ちゃんの大事な部分である脳や心臓などがつくられる時期なので、少し頭痛がするとか風邪をひいたからといって家庭薬をすぐに飲むのではなく、必ず病院へ行って医師と相談してください。また、精神的に不安定になりやすく、イライラしたり、眠れなかったりしますが、できるだけ精神安定剤などは連用しないようにしましょう。しかし妊娠期間中でも、例えば糖尿病や心疾患など、それらを治療しておかなければ妊娠の継続が困難な時には医師の指示のもとにお薬の服用が必要とされる場合もあります。また、ビタミン剤、鉄剤、カルシウム剤や妊娠時に特異的に起り易い異常や疾患に対する治療薬(例えば、つわりに対するお薬や妊娠中毒症に対するお薬等)の服用も医師の指示を受けて下さい。妊娠すると便秘になりがちですが、強い下剤は子宮を収縮して流産、早産する危険性がありますので、妊娠中あるいは妊娠の可能性のある女性が診察を受ける場合は、その旨を必ず医師に話してください。医師は細心の注意を払って安全かつ有効と認められるお薬を処方しますので、安心して服用することができます。くれぐれも自分の判断でお薬を買って飲むようなことは避けて下さい。
お薬によっては成分が母乳に含まれる場合もありますので、授乳中のお母さんがお薬を飲むときには医師に相談しておきましょう。
お薬は保管状態が悪いと効果に悪影響を及ぼすことがあります。効果を十分に発揮させ安全に服用するためにはお薬に適した保管をすることが大切です。最も注意することは、「高温・多湿・直射日光」の3点を避けることです。ですから直射日光が当たらない湿気の少ない涼しい所で保存することが大切です。特に梅雨時の保管には十分な注意が必要です。
目薬やシロップ剤などは一つの容器から何度も使用するため、汚染を防ぐために冷蔵庫に保存した方が安全です。糖衣錠やシロップ剤は小さい子供にとっては美味しいお菓子に見えるかもしれませんし、視力の衰えたお年寄りには小さな活字の説明書が読みづらくて誤って使用することがあるかもしれません。小さな子供やお年寄りのいる家庭では簡単に手が届くところに置かないようにしましよう。しかし子供の手が届かないタンスの上などはストーブを焚いたとき熱が上に上がって案外高温になっていることがあります。また自動車内などは高温になるため放置することは避けてください。台所は湿度が高いので避けたい場所の一つです。冷所保存というのは15℃以下を、室温保存は1~30℃のことを言います。冷所保存でもフリーザーに入れるとお薬によっては変質して効果が無くなるものもあります。残ったお薬は、変質等を考慮して原則として服用または使用しないでください。
お薬はいつまでも効き目があるものではありません。保存状態が悪ければすぐにダメになってしまうお薬もあります。外観が変化しているような場合には使用するのは差し控えましょう。特に目薬やシロップ剤は雑菌やカビが混入すると、薬剤の水分や糖分によってどんどん繁殖して増えることもありますので、長く使わなかった場合には惜しまずに廃棄しましょう。一週間以上前に処方された水剤は使用しないでください。通常の錠剤やカプセル剤についても半年以上前の処方薬は使用しないようにしましょう。